デジタルミキシングカード・スペックの読み方

 ここにあげる例は、パソコンに組み込んでハードディスクレコーディングなどをするための、デジタルミキシングカードのスペックです。

 パソコン用の「サウンドカード」とは全く違うコンセプトでつくられている、新しいタイプの機器です。

 何ができるカードかというのもその姿からは想像しにくいのですが、、マルチトラック録音や、ミキサー、エフェクターなどと同じ働きをするカードです。

 いろんな機器の回路をぎゅっとまとめたものだと理解しておけば良いでしょう。

 デジタル信号処理機器の一種ですから、スペックはアナログ的に見るとほとんど何も書いてないのと同じぐらい簡単なものです。

 とはいっても、この手のパソコンカードのポイントはなんと言っても「信号処理」ですから、メーカーが提示するスペックもデジタル面に重心がおかれるのも当然といえます。

注:写真でもないとわかりにくいでしょうが、「覆面評価」ということで、ご勘弁ください。
なお、このスペックは該当メーカーのホームページからのものです。カタログにはより詳しいことが書かれていると期待しています。


  ■PCIインターフェイス


 PCIインターフェイスとは、このカードとパソコンとの接続に使用されるインターフェースのことです。

PCIインターフェイス  PCI revision 2.1準拠、ハーフサイズ

 PCIインターフェイスは、Windowsパソコン、Mac のどちらにも搭載されていますから、汎用性の高いインターフェースです。

 「revision 2.1準拠」というのは、PCIインターフェースの種類のことですが、内容はほぼ同じですから、「PCIバス」が付いているパソコンであれば問題なく動きます。

 「ハーフサイズ」はカードの大きさのことで、奥行きの長さが半分であることを表しています。
 これに対して、「フルサイズ」というのもありますが、フルサイズのカードではカードがパソコンの中の部品に当たってしまい、取り付けられないことがあります。
 ハーフサイズであればまず問題となることはないでしょう。
 ただし、カードの購入の際には物理的に「取り付けられる」事ぐらいは確認すべきです。

注:この「PCI」という略語はパソコン用語です。

  ■再生


 カセットやMDのスペックみたいですが、このカードとパソコンの間で処理される、出力に関するスペックです。カードから外に出てくる信号の意味ではありません。
(デジタルインターフェイスという項目が別にあります)

 このカードがハードディスクレコーディングを強く意識しているため、「録音・再生」という言葉を使っているのでしょう。

再生  32bitモノ×16または16bitステレオ×8

 デジタル状態で扱う信号の事ですから、「bit」は音の良さを表し、「X8」の項目はチャンネル数を表しています。

 一昔前のアナログMTR的に表現すると「高品質で16チャンネル、またはふつうの品質でステレオ8チャンネル」と言うことになります。


  ■ 録音


 これも、このカードからパソコンへの信号の出力の意味です。

もっと的確な言葉もあるのでしょうが、あまり耳慣れない専門用語より、「録音」としたほうがわかりやすいだろうというメーカーの配慮でしょう。(何となく違和感がありますが・・・)

録音  32bitモノ×8または16bitステレオ×4

 この項目も「再生」で説明したのと同じく、MTR的に言うと音質とチャンネル数です。

 ただし、「再生」に比べて、チャンネル数が半分になっています。
 これは、このカードがDTMを中心に考えているためでしょう。DTMでは同時に録音するチャンネル数は限られていますから、このスペックで十分だと思います。

 しかし、スタジオレコーディングとなると話は別で、チャンネル数は多いにこしたことはありません。 もっとも、パートごとの録音ができるならば、やりくりできる範囲だと思います。

 また、この項目からだけでは、「ステレオ」信号の扱いが、モノラルが2つあると判断して良いのかわかりません。
 コンソールのステレオモジュールのようにフェーダもイコライザも連動してしまうような構成になっていた場合、「ステレオX4」は「モノラルX8」とは意味が全く違ってきます。

このカードはデジタル信号処理ですし、コントロールもパソコンでするので、アナログコンソールのように物理的なモジュールに束縛される必要がないので、本来ならどちらも可能なはずです。

  ■アナログインターフェイス


 この項目がアナログ機器でいうところの入出力に相当します。 「インターフェース」と表現しているところが、デジタル中心のカードであることを物語っています。

アナログ
インター
フェイス
入力レベル=-10dBV(ノミナル)、+6dBV(最大)
出力レベル=-10dBV(ノミナル)、+6dBV(最大)
端子=RCAピンジャック(不平衡)
ダイナミックレンジ=94dB(DA)/93dB(AD+DA)

 特に説明の必要は無いと思いますが、アンバランスの送り受けであること、ノミナルが-10dBV、ヘッドルームが16dBしかないところが特徴です。

 内部回路がどのようになっているかで最大出力が決まってしまいますので、そこから逆算してノミナルを決定したものと思われます。パソコンの中には±12Vもありますが、このスペックだと、+5V単一電源で動かしているのかもしれません。 最近のAD/DAは+5V単一電源というのが主流ですから、パソコンの世界で言えば当然のスペックなのでしょう。

 また、ノミナルレベルからすると、コンシュマーオーディオクラスのスペックですが、目的がDTMであるなら良しとせざるを得ません。

 ダイナミックレンジは信号処理が20ビットのカードとしては多少不満が残るところです。

注:なぜか20ビットという情報はほかの項目に書かれています。

  ■デジタルインターフェイス


 デジタルが中心のカードですから、この項目の方を重視すべきかもしれません。

デジタル
インター
フェイス
(内部拡張/
カスケード用)
IO-A、IO-B=4/8チャンネル入出力、
最高32ビット、
20ピンMILコネクター(入出力拡張用)

SI、SO=8/16チャンネル入出力、
最高32ビット、
16ピンMILコネクター(カスケード用)

 「内部拡張/カスケード用」と言うのは、このカードを2枚以上パソコンに付けて扱えるチャンネルを増やせるように考えられていることを示しています。

 このカードは入出力ユニットは別売になっていて、それを加えることでより多くのチャンネルが確保できるような構成になっています。このために用意されているのが「IO-A、IO-B=4/8チャンネル入出力」というわけです。
なぜ16チャンネルでないのでしょうか・・・。

 さらに、このカードを2枚使えば、扱えるチャンネルも増やせるはずですから、そのために用意されているのが「SI、SO=8/16チャンネル入出力」です。
 大きな規模のカードでは値段も高くなりますから、必要に応じて拡張できるというは導入初期のコストを押さえることができるのでありがたいことです。

 ここで、「MILコネクター」と言う言葉が出てきていますが、これはパソコンなどのデジタル機器ではよく使われるコネクタで、10ピンから60ピンまであり、パソコンのケースを開けたことがある方なら一度は目にしているはずです。
 アナログコンソールのバスの配線にも使われることがあります。

  ■サンプリング周波数


 デジタル機器では宿命の項目です。

サンプリング
周波数
 44.1/48kHz(Internal)、30.08-50.88kHz
(バリピッチ/External)

 「Internal」の項目は内部でサンプリング周波数を決めた場合、44.1kHzまたは48kHzが選べるという意味です。 これ以外の周波数もDTMに限って言えば考えにくいので、問題なしと考えて良いでしょう。

 「バリピッチ/External」というのは外部のサンプリング周波数に同期させた場合、30.08から50.88kHzまで対応できると言うことです。

 裏返せば、このカードはサンプリング周波数を外部同期できると言うことですから、これからどんどんデジタル化が進むDTMの世界では先取りした仕様かもしれません。

 内部の信号処理的には大変になるところもあるのですが、うまく解決されているものと期待します。

  ■20bit/24bit切り換え可


 この一文はこれだけですので、コメントをどうつけてよいのか迷ってしまいます。

20bit/24bit切り換え可 特記はありません        

 おそらく、デジタルインターフェースの入出力のビット数が切り替え可能ということだろうとおもいます。

というのは、ハードディスクへのレコーディングは「録音・再生」の項目で32ビットとありましたので、ビット数が問題になる箇所はCOAXIALの部分しかないためです。

 COAXIALはSPDIFと呼ばれるDATなどについているインターフェースと同じです。この規格ではチャンネルあたり24ビットまで伝送できますので、そのビットすべてが利用可能と言うことです。ただし、送り・受けの機器がそこまでの性能があるかどうかは別問題です。

 また、16ビットの機器をつないだからと言ってひどいことになったりもしません。受け側の機器に無視されるだけで音質は16ビットとなります。

  ■寸法・重量


 特に重ければいいってものでも無いので、重さは気にする必要はありません。

寸法・重量  125.92H×187.97L×21.59Dmm・170g

 寸法の方はパソコンの中に収まるかどうかしっかりチェックしましょう。

このカードでは上側にコネクタがささりますから、邪魔ものがないかも調べておく必要があります。最近の小型のディストップ機などでは余裕が無いことも考えられます。
 こういった用途にはミドルタワーケースか、フルタワーケースがふさわしいでしょう。

  ■補足  (このページの管理者追記)


 パソコンのハードディスクにレコーディングするということは、つい数年前までは一般的ではありませんでした。もっとも、パソコンをシーケンサ代わりにしてしまうというのはかなり以前からありましたが、「録音」もパソコンの能力アップに支えられる形で一般化しつつあります。

 ただ、どんなパソコンがいいかについては、この仕様(メーカーのホームページ)からは読みとれませんでした。

 ホームページの機能詳細の文面には不要な形容詞もすくなく、ひょっとして私と同類(ハードの設計者)が書いたのではないかと思わせるところもあります。

 パソコンに欠けている部分をカードで補って、ハードディスクレコーダー以上のものにしてしまおうという、野心的な試みも感じられるのですが、そのメリットが十分に伝わってこないのが残念です。

 ただ、機能的な部分はソフトによるところが大きく、使いやすさや可能性を十分に伝えようとすると、ソフト(今のところこのメーカー以外のソフト会社のもの)の紹介が中心になってしまうというジレンマがあるのかもしれません。

 いずれにしても、このカードの様な形態は今後伸びることは間違いないのですが、現状はアンテナが伸びきった感度の高いユーザーだけが、そのアドバンテージを享受できるのではないかと思います。

 より詳しいハードディスクレコーディングの情報はリンクのコーナーでGetしてください。


  

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